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印刷における見えない工程「段取り準備」とは

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「ステッカーの印刷は材料を機械にセットしてスタートボタンを押したら終わり」……そんなイメージをお持ちではありませんか?

実は、印刷の事前準備にあたる段取り準備にかかる時間は、ステッカーの製作における印刷工程の大きな割合を占めており、また、製品の仕上がりを左右する重要な役割を担っています。


今回は10月に開催されたラベルコンテストの出品物製作風景をご紹介します。普段は公開できない印刷工程の一端を、写真とあわせてご覧ください。


  目次  



印刷技術者たちが腕を競うラベルコンテスト

ラベルコンテストとは、全日本シール印刷共同組合連合会が主催している、シール・ラベルの印刷技術を競うコンテストです。

規定課題と自由課題の2種部門があり、毎年内容が変わる規定課題では、平圧式凸版印刷と輪転・または間欠輪転式凸版印刷が課題の対象となっています。


参考記事


毎年課題の難易度は高く、網点やグラデーション・細線などの繊細な柄の印刷や、精度の高い抜き加工が求められるデザインなど、通常業務以上の技術力が試される内容となっています。



写真で見る製作現場のリアル

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今年の平圧式凸版印刷課題の見本は黄・紫・青金の3色構成です。

コンテスト出品者はこの見本をもとに調色・確認を行います。


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今回製作に使用する機械、OPM-W150-3(恩田製作所)です。


調色

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紫インクは社内に在庫がなかったため、見本と同じ色を再現すべく調色を行いました。

平圧式凸版印刷は凸状の版を材料に押し付ける印刷方法のため、印刷時の圧やインクの希釈度合いによって製品への色の出方が異なります。

インクの塊での色の状態ではなく印刷された状況で見本の色に揃うように、実際の印刷物と見本を照らし合わせて適宜調整します。



版位置調整

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通常の製品では1色ずつ順番に印刷することでずれを防ぐほか版の色映りを防止しますが、今回はコンテスト規定により1回の印刷で3色を同時に刷る必要がありました。

紫と黄・青金が隣接したデザインであり、少しのずれでも目立ってしまうため、

ロゴやふちの細い線・イラストのラインが隣の色と重なってしまっていないか、または地の白が見えてしまっていないかを確認しながら、何度も試し刷りを行います。調整の余地が限られる中で、技術力が問われる工程です。


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インクの乗り具合を確認しつつ、版の位置や高さを微調整します。



抜型の設置

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版とインクのセットが完了したら、次は抜型の設置です。

今回は長方形の形状にキスカット(半抜き・ハーフカット)を施します。


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参考



印刷内容の調整

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版・抜型・インクのセットが完了しても、実際に機械を動かすと予期せぬ挙動が発生することがあります。

そのため、問題を一つずつ解決していく調整工程が必要です。

通常の製品では、印刷方法や材料選定、データ作成の工夫により調整を最小限に抑えますが、

今回はコンテスト出品物のため、あえて複雑な印刷内容に挑戦。調整の精度も審査対象となります。


たとえば上記の写真をご覧ください。

右側の紫が印刷できておらず欠けが発生しています。

このように、一部印刷されない箇所が発生した場合は版の高さを盛って均等に印刷されるよう調整したり、

版の高さを調整することで意図しない色合いに変化してしまった場合は再度調色しなおしたりと、

製品が見本に近づけるよう細かな微調整を繰り返します。



そしてついに……

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試行錯誤の末、見本と相違ないと判断された段階で、ようやく量産が始まります。

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より良い製品づくりに真摯に取り組む姿を見て、筆者も自然と背筋が伸びます。

今年の課題は紫の均一な出力が難しく、オペレーターは締め切りまで可能な限り調整を重ねていました。



よりよい製品をお届けするために

今回はラベルコンテスト出品物の製作風景と、段取り準備を中心にご紹介しました。

当社の印刷物においては、お客様の意図したデザインが正確に再現され、記載された情報がエンドユーザーにしっかりと伝わることが何よりも重要です。

その製品の品質は、見えない工程である段取り準備に支えられています。


製品に向き合う姿勢そのものが、山王の品質を支えています。

今後も皆様の製品づくりを支えるパートナーとして、誠実なものづくりを続けてまいります。


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